イスラーム入門 ―信仰・実践・道徳―

ヒュリイェ・マルトゥ


内容


序文

イスラームとは、他者からのいかなる強制もなしに、自分自身の意思によって唯一神アッラーを望み、かの御方の命令に服することである。信仰・実践・道徳を備えた完全な体系をもつ宗教であるイスラームは、預言者アダムが人類に最初の啓示を伝えたその日から、世界の終わりである最後の審判の日に至るまで、途切れることなく受け継がれていく唯一にして欠陥なき教えである。
 イスラームの土台とは、唯一神アッラーが創造した森羅万象の調和と、その中に生きる人類を守ることである。またイスラームは、人間と神との関係のみならず、周囲の人々、自然界のあらゆるもの、そして自分自身とのあるべき関係を築くため、導くことを目的としている。この目的のもとに土台が築かれることによって初めて、個人と社会の双方においての安全が守られる。このようにして、公正と慈愛が大地にあまねく広がってゆくのである。
 最後の預言者ムハンマドは、クルアーンの導きの中、信仰や実践、道徳の原則を示された。これをもってイスラームは、人々の人生のあらゆる場面や瞬間に、善の道を指し示している。また、聖典の教えや預言者たちの生き様が示すような模範を実践するために心血を注ぎ、あらゆる人間が共存、共栄できる世界の築き方を、人々に説いているのだ。
 「イスラームを信じる」とは、信仰を練り上げるために実践に励み、善き人間たらんと努めることである。そして、人間の善性を重視する教えであるイスラームの主たる目的は、強固な道徳意識と誠実な心を持つ人々によるしなやかな社会と、安寧に満ちた世界を築くことである。

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